顎関節症その2
投稿日:2017年1月30日
カテゴリ:顎関節症
基本的に歯科の治療は、まず歯その物の処置になります。
軽度な虫歯は予防処置、深い虫歯は削って詰める。神経まで達していれば神経の処置、歯の周囲の歯肉の炎症が広がり歯周炎に移行していれば、歯周処置、重度に進行していれば抜歯、歯が無くなればブリッジや入歯、インプラントの補綴処置となります。
しかし歯科の治療領域である顎の関節となると、少し今までの感覚から外れている感じがあったため、口腔外科がまず治療に介入した、しかし補綴処置後に顎の関節に異常を訴える患者が数多くいるため、補綴科も治療に介入していった。
平たく表現すると、外科の観点から関節にアプローチするのと、補綴から関節にアプローチする場合では全然違う見方をしてきた感じがあった。
外科からの観点では、親不知などの感染による炎症から口が開かなくなった症例をよく見ているので、除痛や炎症に対してのアプローチと開口練習などのリハビリに偏り気味である、方や補綴では患者から口腔内に補綴物を入れてから顎関節に問題が起きたと言われる事が多いために、そのかみ合わせの治療に問題があったとするアプローチが多いように思う。そのために正しいであろう、所謂顎位を探すためにスプリント療法と言ってマウスピースを用いてかみ合わせや顎運動が左右対称になるように理想咬合を目指して苦労することになる。また歯列矯正医も歯並びを変えるために、補綴的なアプローチと似た考えの元治療を組み立てようとする。
どちらのアプローチも顎関節の症状が軽度であれば、それなりの効果が一時的に出るものの、多くの症例ではまた顎関節の症状は再発する。
先ほど書いた中で、補綴物を入れた後に患者の訴えによって、その補綴物のかみ合わせに問題があるために云々と書いたが、そもそも天然の歯がなぜ補綴しなければならなくなったかを考えるところから始めなければ、本質を見失うと思う。
患者から歯医者がよく言われることがある、「○○先生が治療してから30年持ったのに、△△先生が治療したら6年しかもたなかったからへたくそ。」
最初に治療した時点では、その歯はまだポテンシャルが残っていたから30年持った訳で、もう限界を迎えたから問題が発生したために再治療になった訳である、そのため二回目の治療開始時点でその歯のポテンシャルはあまり残っていないのだから、同じように30年持つはずが無いことが前提となっているのである。
そもそも生体は老化し続けているので、当然口の中も30年前とは条件が違うのである。
少し本題からずれたので戻すと、つまり老化によって姿勢の変化から全身の骨はリモデリングしており、顎の骨も形態変化が常に起こっているのである。
顎の関節は側頭骨に繋がっていて、左右の側頭骨の歪みが出れば顎関節の左右差が出ることは想像に難くない、単純に補綴物を変える程度では本当に軽度な顎関節症しか対応できないし、対応したとしてもどこまで対応できるかは多くの疑問が残る。
根本を考えていくと、顎関節症が発症しやすい顎の形がある。それは骨格的にはⅡ級一類に代表される下顎が小さく下顎下縁平面がスティープに立っているタイプで、姿勢が悪く首も頭も前に出ている姿勢を取っているために、口腔周囲筋、舌骨上筋群、下筋群が後ろに引く力が強いことから、首、肩、背中、腰の筋肉の慢性的な緊張が強い。これは上顎、下顎の後方回転を誘発し骨の形その物を歪ませる。
これが徐々に歯を移動させかみ合わせを悪化させ、虫歯、歯周病、顎関節症、歯ぎしり食いしばりを誘発していくと考えると辻褄が合う。
歯科の治療は本当に考える事が多く大変です。
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